【ご相談の内容等】
30代
女性
結婚式場運営会社との間で,結婚式及び挙式に関する契約を結んだが,都合により,解約することにした。
解約の意向を伝えたところ,式場側より,違約金を請求された。
解約申出日から結婚式当日まで,1年近くあるので,できれば,違約金を支払いたくない。
【結婚式違約金規定の有効性と消費者契約法について】
1合意による損害賠償額の予定は原則として有効
契約の当事者は,合意によって債務の不履行により生じる損害賠償額を予定し,予め定めておくことができます(民法420条1項)。
そして,結婚式場運営会社の結婚式に関する違約金規定は,「損害賠償額の予定」に該当すると考えられ,裁判所は,当事者が予定した損害賠償額を増減することはできません(民法420条1項)。
もっとも,これから述べますように,消費者と事業者との間で締結される消費者契約においては,民法の特別法にあたる「消費者契約法」が優先適用される場合があります。
2消費者契約法による修正
すなわち,結婚式場に関する契約などの消費者契約においては,消費者(利用者側)と事業者(結婚式場運営者側)との間の情報の質・量や交渉力に大きな格差があることから,不当に高額な違約金規定が契約に盛り込まれてしまう場合があり得ます。
そこで,消費者契約法9条1号は,消費者契約の解除に伴う損害賠償額の予定の定めがある場合でも,契約が解除されたときに事業者に生ずべき「平均的な損害」の額を超える部分については無効になると規定し,消費者は「平均的な損害」のみ賠償すれば足りると定めています。
3「平均的な損害の額」の意味内容
ここで,「平均的な損害の額」とは,「同一事業者が締結する多数の同種契約事案について類型的に考察した場合に算定される平均的な損害の額」であり,「具体的には,解除の事由,時期等により同一の区分に分類される複数の同種の契約の解除に伴い,当該事業者に生じる損害の額の平均値を意味する」と説明されています(消費者庁消費者制度課編『逐条解説消費者契約法』209頁(商事法務,第2版補訂版,2015))具体的に,損害額を算定するにあたっては,ケースバイケースで個別の事情に応じ,当該事業者が契約の履行に備えて通常必要な費用や他の顧客を募集できなかったことによる一般的・客観的な逸失利益等が考慮されることになるでしょう(東京地判平成24年4月23日(平成23(レ)774)。
4今回のご相談内容の場合
今回のご相談内容の場合,仮に,ご相談者様が結婚式に関する契約を解約したとしても,今後1年近くの間に,ご相談者様が予定していた挙式日に新たな予約が入る可能性があります。
そのため,仮に,ご相談者様が結婚式に関する契約を解約したとしても,結婚式場運営会社側には「平均的な損害」が発生しているとはいえず,結婚式場運営会社側の違約金規定は「平均的な損害」を超えるものとして無効と主張する余地があるといえるでしょう。
※個別の事情により主張の可否や主張内容は変わる可能性がございますので,ご留意ください。
【弁護士の一言】
結婚式場との間でトラブルが発生しましたら,まずは,お気軽に,横浜〈馬車道・関内〉の弁護士木下正信までご相談くださいませ。