横浜<馬車道・関内>の弁護士木下正信です。
法学教室2021年5月号(有斐閣)を学習しました。
1 今月の◆特集は,「条文から学ぶ刑法」でした。
◆特集1 条文から学ぶ刑法
Ⅰ やむを得ずにした行為
Ⅱ 罪を犯す意思
Ⅲ 暴行又は脅迫
Ⅳ 遺棄
Ⅴ 占有
Ⅵ 電磁的記録――デジタル刑法の基礎
一般の方には初めは違和感のあることだと思いますが,法律の世界では,同じ言葉遣い(文言)をしている場合でも,法律ごとや条文ごとに意味内容が異なる場合があります。
今回の特集では,例えば,刑法36条1項の正当防衛と刑法37条1項本文に共通する文言である「やむを得ずにした行為」に関し,法の趣旨から解釈をする大切さを学ぶことができました。
2知的好奇心を刺激する民事訴訟法
知的好奇心を刺激する民事訴訟法の第15回のテーマは,「第6章 判決(その3)」でした。
具体的には,既判力の主観的範囲に関し,当事者(民事訴訟法115条1項1号),訴訟担当の被担当者(同2号),「請求の目的物の所持者(同4号)」との対比の観点から,「口頭弁論終結後の承継人(同3号)」について理解を深めることができました。
既判力については,その正当化根拠は,手続保障を前提とした自己責任を問い得ることと説明されます。
しかしながら,「口頭弁論終結後の承継人(同3号)」については,口頭弁論を終結した後に登場する以上,手続保障は充足していないのではないか,自己責任は問えないのではないか,と疑問がわくところです。
この点については,「前訴のときには承継人は生じていなかったのであるから,前訴で承継人に手続保障を与えることは不可能である。他方,勝訴者の権利・法律関係の安定のためには,既判力を拡張しなければならない。そこで,前訴で紛争の主体たる地位にあったのは前主(譲渡人)だけであるから,前主が承継人に代わって手続き保障を受けていたとかろうじて見做すことができる。…結局は,勝訴者の権利・法律関係の安定のために,承継人への手続保障はこの程度で我慢してもらわなければならない。こういう意味では,口頭弁論終結後の承継人への既判力拡張は立法者の決断だと言ってもよい」(高橋概論280頁)との記述のとおり,厳密に考えれば手続保障は問えないが,必要性(勝訴者の権利・法律関係の安定)が大きいため,既判力の範囲を拡張したということでした。
最近は暑い日が続きますが,頑張っていきます!