横浜<馬車道・関内>の弁護士木下正信です。
有斐閣の法学教室2018年8月号を読みました。
1【特集】切り拓く法曹
今回の【特集記事】は,切り拓く法曹ということで,主に,企業法務や国際的に活躍されている弁護士の座談会形式のインタビューでした。
私は,法律顧問等として企業法務に携わり,また,昨今,仮想通貨等の応用的な分野のご相談を受けることも少なくないことから,興味深く拝読させていただきました。
読んだ感想としては,「今まで議論されたことのない論点」などについては,条文や基本的な判例から思考する,また,原則論が当てはまらないケースでは,法の趣旨に照らし,実質的な解釈をしていくということが肝要であると思いました。
2判例クローズアップ
判例クローズアップとして,「不動産が商事留置権(商法521条)の目的物に含まれる」ことを示した最初の最高裁判決である最判29年12月14日民集71巻10号2184頁(以下「本判決」といいます。)の解説を読みました。
本判決により,最高裁判所が,商事留置権全面否定説を採用しないことは明らかになりましたが,本判決は,商事留置権と抵当権との関係について何らかの判示をするものではありません。
ですので,今後,商事留置権と抵当権の優先関係については,議論の深化が望まれるところです。
3会社法判例――より深く学ぶ,考える【第11回】取締役の善管注意義務違反と経営判断原則――アパマンショップホールディングス事件判決を踏まえて
経営判断原則とは,取締役の経営判断については,取締役に広い裁量が認められるべきであり,その判断の過程・内容に著しく不合理な点が無い限り,取締役としての善管注意義務に違反するものではないとするものです(最判平成22年7月15日判時2091頁90号,アパマンショップホールディングズ事件)。
経営判断原則が採用される理由としては,「事業経営はリスクを必然的に伴うものであるから,経営判断の結果として会社に損害が生じたからといって,取締役の義務違反が容易に認められるとすれば,経営は萎縮し,また取締役のなり手もいなくなり,結果として会社・株主の利益とならない。」(田中亘「会社法」有斐閣,2016年)からです。
私としても,かかる最高裁判例を踏まえ,法律顧問を務める会社の取締役等に対し,「経営判断を行う時点において,取締役自らが『合理的』と考える『過程』及び『内容』に基づく経営判断をすることが求められているという点」を伝えていくが重要であることを再認識しました。
今週も,頑張っていきます!