横浜〈馬車道・関内〉の弁護士の木下正信です。
有斐閣・法学教室2018年3月号を読みました。
1倒産法の特集
近時,重要判例が複数出ている倒産法の特集が組まれていました。
とりわけ,不法原因給付と破産管財人(最判平成26年10月28日民集68巻8号1325頁)の論文(慶応義塾大学准教授工藤敏隆先生)については,破産管財人の法律上の地位の議論も絡んで,興味深く読ませていただきました。
2判例クローズアップ――強制わいせつ罪における「性的意図」の要否
また,「判例クローズアップ」として,強制わいせつ罪における「性的意図」の要否(最大判平成29年11月29日刑集71巻9号登載予定)が争点となった最高裁判例(以下「本件判決」といいます。)が取り上げられていました。
以下,簡単にご説明します。
これまで,最判昭和45年1月29日刑集24巻1号1頁により,強制わいせつ罪の成立には,主観的要素として,自己の性欲を刺激興奮させ又は満足させる目的(性的意図)が必要と解釈されてきました。
一方,本件判決においては,①「行為そのものが持つ性的性質が明確」ゆえに「当該行為が行われた際の具体的状況等如何にかかわらず当然に性的な意味があると認められる」行為と②「行為そのものが持つ性的性質が不明確」ゆえに「当該行為が行われた際の具体的事情等をも考慮に入れなければ当該行為に性的な意味があるかどうかが評価し難い」行為があるという整理がなされています。
そして,②の行為のわいせつ性判断においては,「個別具体的な事情の一つとして,行為者の目的などの主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得る」との判断が示されたのです。
したがって,本件判決は,強制わいせつ罪の成立要件として,行為者の性的意図を完全に排斥したわけではなく,②の行為については,性的意図を考慮したうえで,わいせつ性の判断を行うことを明らかにしたものです。
3刑法各論の悩みどころ―放火罪をめぐる問題について(最終回)
東京大学教授橋爪隆先生の「刑法各論の悩みどころ」は今回で最終回です。
「放火罪の構造」の整理にはじまり,「公共の危険」の意義につき,最高裁判例の立場(非限定説。最決平成15年4月14日刑集57巻4号445頁。)の理解を深めることができました。
これからも,日々,研鑽して,皆様により良いリーガルサービスを提供できますよう,努めて参ります。