弁護士コラム

2018.03.30更新

 横浜〈馬車道・関内〉の弁護士木下正信です。

 

 有斐閣の法律雑誌『法学教室』2018年4月号を読みました。

有斐閣 法学教室2018年4月号有斐閣 法学教室 2018年4月号

 

以下,簡単に,雑感です。

 

 1【特集】再確認・法学の出発点―条文の大切さ

 

 ●民法分野については,民法177条の「第三者」の解釈をめぐる判例と学説の協働について,北海道大学准教授の根本尚徳先生の論文でした。

 

 

 民法177条は「対抗要件主義」を定め,その趣旨は,登記を基準とした画一的処理により自由競争社会における取引の安全を保護する点にあります。

 

 

 民法第177条
 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

 

 

 この条文における「第三者」の解釈問題に関する判例及び学説の発展について,興味深い検討がなされていました。

 

 

 ●刑法分野については,変容する正当防衛制限論について,神戸大学教授の嶋矢貴之先生の論文でした。

 

 

 正当防衛とは,「急迫不正の侵害」に対して,「自己又は他人の権利を防衛するため」「やむを得ずした行為」をいいます。

 

 

 刑法36条(1項が正当防衛,2項が過剰防衛)に定めがあります。

 

 

 刑法36条(正当防衛)
 1 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
 2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。 

 

 

 昨年,正当防衛については,最決平成29年4月26日刑集71巻4号275頁(以下「平成29年決定」といいます。)という重要判例が出ました。

 

 

 平成29年決定では,

【判示事項】

 侵害を予期した上で対抗行為に及んだ場合における刑法36条の急迫性の判断方法 について,

 

【裁判要旨】
 行為者が侵害を予期した上で対抗行為に及んだ場合,侵害の急迫性の要件については,対抗行為に先行する事情を含めた行為全般の状況に照らして検討すべきであり,事案に応じ,行為者と相手方との従前の関係,予期された侵害の内容,侵害の予期の程度,侵害回避の容易性,侵害場所に出向く必要性,侵害場所にとどまる相当性,対抗行為の準備の状況(特に,凶器の準備の有無や準備した凶器の性状等),実際の侵害行為の内容と予期された侵害との異同,行為者が侵害に臨んだ状況及びその際の意思内容等を考慮し,緊急状況の下で公的機関による法的保護を求めることが期待できないときに私人による対抗行為を許容した刑法36条の趣旨に照らし許容されるものとはいえない場合には,侵害の急迫性の要件を充たさないものというべきである。

 

という,重要なルールが示されています。

 

今後は,平成29年決定の判示内容を前提に,弁護士も弁護活動を行う必要があります。

 

 

2【講座】学びなおし・民法総則

 

 

 京都大学教授潮見佳男先生の論文です。

 

 

 第1回は,「民法94条2項の適用と類推適用」がテーマでした。

 

 

 民法94条2項は「表見法理(権利外観法理)を基礎に据える以上,保護に値する第三者は,外観(仮想行為)に対する「信頼」,すなわち,外観どおりの意思表示が存在すると「信じたこと」を求められるのではないかという問題」意識の指摘が印象的でした。

 

 

 判例の結論のみを押さえるのではなく,判例を内在的に理解することを意識して,今後も勉強していきたいと思います。

 

 

 

 

 今週も,今日で終わりですが,頑張っていきたいと思います!

 

 

 

 

 

投稿者: 弁護士木下正信

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